松阪もめんの手織りのストール

丸川商店の商品に、「フアヲ」という松阪もめんの手織りのストールがあります。
フアヲはいろんな縁をつないでくれたストールで、その中でも、特に印象に残っている出逢いがありました。
それは、2010年の銀座手仕事直売所に参加中のこと。
なんとも優しい眼差しでフアヲをご覧いただいていた80歳代と思われるおばあさまから、とても素敵なお言葉をいただきました。
「色使いも風合いも手触りもネーミングも、この商品は全てが完璧。とても美しい。私は最近、108歳の母の長い看病を終えたばかりで、お金をそっちに全部使っちゃったから、残念だけど買うことが出来なくて、でも、この商品を織り上げた方にぜひともお伝えください、心が洗われる想いがするくらい素敵な商品だって。こんな綺麗なものを見させてもらえて、本当にありがとうございます。本当にいいものに出会わせてもらえたわ。」
僕はウルってするくらい、真っ直ぐに心が震えました。
お客様の中には、作り手へのリスペクトがない人もいて、そういう人は商品を「雑」に扱っていかれる方も結構いる中で、このおばあさまは、むしろ僕達よりも、このフアヲを優しく優しく撫でておられた。
僕は想像してみた。
残念ながら亡くなられた108歳のお母様と、娘であるこのおばあさまが、お揃いでこのフアヲを巻いている姿。
おばあさまがお帰りになられた後もしばらく、僕はあったかくて優しい光に包まれたような不思議な感覚のままでいて、そしてハッと思った。
ああ、プレゼントすればよかった、そうだ、このフアヲは、ああいう方にこそお使いいただくべきものなんだ、そういう想いで、このフアヲを作ったんだから。
次の日も、その次の日も、あのおばあさまがもう一度会場に現れてくれないかといつも思いながら店頭に立った。
なんとかもう一度、フアヲに会いにきてくださいって、祈りながら。
でも、それも叶わず、イベントは終わってしまった。
今考えたら、僕の思いつきはなんとも失礼な行為だったかも知れない。
きっとあのおばあさまも、受け取ってはくれなかったことだろう。
生意気で出過ぎた思いつきだったが、それでも、フアヲを作って、これほど良かったと思ったのははじめてだった。
本当にフアヲを作って良かった。
この先、あのおばあさまに再会できるかどうかはわからない。
マスクをされていたので、残念ながらお顔もはっきりとは見れなかった。
もちろん、名前も何もわからない。
でも、僕はこの先、あのおばあさまのために、フアヲを作り続けていこうと思う。
いつかきっと、あのあばあさまに再会して、とびきりのフアヲと、心からのありがとうをお贈りするために。
もちろん、フアヲを待ってくれている方々のために、フアヲを巻いてほしいと僕らが願う方々のために、フアヲ自身が、暖めてあげたいと願う全ての方々のためにも。
名もしらぬ貴女へ、こちらこそ、本当にありがとうございました。
きっときっと、貴女にまた、逢えますように。
僕らはきっときっと、毎年あの場所で、フアヲを持って、再会できる日をお待ちしています。
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