まわり道
中学生の時、当時付き合っていた女の子とそれぞれの部活終わりに待ち合わせをして、一緒に帰るのが日課だった。
彼女の家は、学校から歩いて数分の距離だったから、反対方向へ出て、ぐるりとまわり道をして一緒に帰るのがお決まりのコースだったな。
何もない田舎の道。
何ってわけでもない、たわいもない会話。
でもそこには、キラキラと輝く風景と時間と、大好きな彼女の笑顔があった。
まわり道は、遠回り。
考えてみれば、僕の人生はずっと遠回りだったと思う。
東京へ出るのも遅かったし、東京へ出てからも、ぐるぐると余計なまわり道をしてばかりだった。
デザイナーとして独立したものの、まわりは一本道を駆け上がってきたエリートたち。
大学も美大も芸大も出ていない、専門学校にすら行っていない、どこかのデザイン事務所に勤めたこともない。
独学と言えば多少は聞こえがいいけど、未経験にも程があるほどの無謀さ。
スタートするまでもなく、最初から勝負が見えていたレースのようだった。
でも、だからこそ見つけられたこともあったと思う。
まわり道だろうと、遠回りだろうと、周回遅れだろうと、そこから今に、確かに道は続いていたんだから。
まわり道は、遠回り。
誰だって遠回りは嫌だろうけど、でも、そこにしかない、そこでしか手に入らない、そんな宝物のような時間だってある。
いつもの帰り道。
ある日、彼女が言った。
「もう着いてしもたなあ。もう一周、まわろっか?」
まわり道でも、宝物は見つけられる。
彼女の家は、学校から歩いて数分の距離だったから、反対方向へ出て、ぐるりとまわり道をして一緒に帰るのがお決まりのコースだったな。
何もない田舎の道。
何ってわけでもない、たわいもない会話。
でもそこには、キラキラと輝く風景と時間と、大好きな彼女の笑顔があった。
まわり道は、遠回り。
考えてみれば、僕の人生はずっと遠回りだったと思う。
東京へ出るのも遅かったし、東京へ出てからも、ぐるぐると余計なまわり道をしてばかりだった。
デザイナーとして独立したものの、まわりは一本道を駆け上がってきたエリートたち。
大学も美大も芸大も出ていない、専門学校にすら行っていない、どこかのデザイン事務所に勤めたこともない。
独学と言えば多少は聞こえがいいけど、未経験にも程があるほどの無謀さ。
スタートするまでもなく、最初から勝負が見えていたレースのようだった。
でも、だからこそ見つけられたこともあったと思う。
まわり道だろうと、遠回りだろうと、周回遅れだろうと、そこから今に、確かに道は続いていたんだから。
まわり道は、遠回り。
誰だって遠回りは嫌だろうけど、でも、そこにしかない、そこでしか手に入らない、そんな宝物のような時間だってある。
いつもの帰り道。
ある日、彼女が言った。
「もう着いてしもたなあ。もう一周、まわろっか?」
まわり道でも、宝物は見つけられる。
桐本のアニキ
3月11日放送のNHK「プロフェッショナル~仕事の流儀~」に、我らがアニキ、輪島塗の桐本さんが登場。
能登半島地震のまだまだ真っただ中にいて、それでもそこから立ち上がろうと奮起する姿は、僕が知るアニキそのものだったので、言葉は正しくないかもしれないけど、でも、嬉しかった。
これは輪島塗じゃない、と拒絶された過去の話は以前から聞いていたけど、今ではもう、輪島になくてはならない人。
時間はかかったのかもしれないけど、輪島をここまで深く愛してる人の想いが伝わらないわけがない。
桐本アニキとの出会いは、僕が東京の清澄白河に事務所を構えたあとだから、もう15~16年以上前とかになるのかな。
僕の師匠である、柏木江里子さんに紹介してもらったのが最初の出会いだったと思う。
映像の中でも触れていたけど、輪島キリモトが作る漆器の魅力のひとつは、その美しさのみならず、傷ついてもまた直して、そうやって長く使っていけること。
当時、不況にあえぐ地場の中で、どうすれば喜んでもらえるか、どうすれば心地よく使ってもらえるか、その原点とも言うべき問いの先にあったのが、輪島塗の王道を避けてまで挑んだ、輪島キリモトだけの新たな輪島塗だったんだと思う。
桐本アニキや輪島キリモトの職人の方々を見ていると、輪島キリモトが生み出す漆器の本当の魅力は、フォークでガリガリしても傷がつかない強さ、というより、傷ついてもなお、その傷をも受け入れ、それすらその漆器の大切な物語の一部にしてしまう、そんな「しなやかさ」なんじゃないだろうか。
桐本アニキという人もまた、全てを跳ねのける強さの人ではなく、誰よりもしっかりと傷ついて、まわりの人たちの傷も一緒に抱きしめて、さあそっからどう立ち上がるかを自然と考える、本当にしなやかで魅力的な人だなと改めて思った。
輪島塗のような、桐本さん。
桐本さんのような、輪島塗。
さあ、もっかいここから。
アニキのことだから、もうとっくに走り出しているだろうけど、輪島塗、輪島キリモト、そしてそれを心から愛する人たちの物語は、まだまだこれからも、ずっとずっと続いていきます。