子どもだまし



大昔からあるこんな子どもだましでも、娘に見せたら目を丸くして、「おかあさ〜ん!おとうさんの指が取れた〜!」っと期待通りのリアクション。

そんな純粋さをいつまでも忘れないでくれ。
やぎの箱



まだ幼い頃、この「やぎの箱」と書かれた箱の中には、見たことも感じたこともない宇宙が広がっていて、この四角い小さな穴は、遙かなる桃源郷への入口であると信じていた。
この箱の横を通る時はいつも、見ないふりをしながら、でも実はめちゃくちゃドキドキしてて、あの箱ごと遠くへ連れ去ってしまいたいと願ったものだ。

まあ、ただのエロ本回収箱なわけですが、今日、松阪市の松ヶ崎駅近くで何十年ぶりに発見して、駅にいた女子高生ににらまれながらも、おもわず写真を撮ってしまいました。
幼き日に僕が見た箱には、DVDなんて字は書いてなかったし、いくらやぎさんでもDVDは食べれないけどね。

今の子ども達は、この箱を見てもドキドキしないんだろうなあ。
そして現在の僕も、もうドキドキはしない。
あ~、汚れた大人になってしまったんだね、あなたも僕も。
雨のお墓参り



中学の時に陸上部に入った。
3年生の時にキャプテンになった。
全国ランキングで1位にもなった。
練習はきつかったけど、とにかく楽しかった。
部員達はみんな良い奴で、特に女子マネージャーは最高にいい奴だった。
当時の僕の彼女の親友だったこともあって、マネージャーとは、色んなことをいっぱい話した。
いつも笑顔で、いつも明るくて、練習が辛い時も、彼女の笑顔のおかげで和らいだ。
とにかく、仲間として、親友として、僕もみんなも、彼女のことが大好きだった。

中学を卒業してからは、一度も会う機会がなかった。
でも、当時の僕の彼女を通して、近況は伝わってきてた。
どこへ行っても、彼女はみんなから愛された。
当然のことだと思った。

やがて彼女は結婚して、数年後に子どもを身籠もった。
どこまでも優しい彼女のことだから、旦那さんもきっといい人で、2人で妊娠をものすごく喜んだに違いない。
彼女なら絶対にいいお母さんになる。

の、はずだった。

妊娠がわかってからの検診で、彼女にガンが見つかった。
すでに進行しているガンで、すぐにでも抗ガン剤治療が必要だったそうだ。
でも彼女は、それを拒否した。
もちろん、お腹の子のためだ。
抗がん剤を使えば、子どもを諦めざるえない。
彼女は、出産後に治療を受ける道を選んだ。

その後、無事に子どもが生まれた。
でも彼女は、命をかけて守り抜いた我が子を、一度も見ることもなく、たったの一度も抱き締めることもなく、16年前の6月9日に、天国へと旅立った。
その時、彼女は27歳。
幕を降ろすにはあまりにも早すぎた。

彼女が命がけで守り抜いた息子は、彼女と同じ中学へ入った。
きっと彼女も、その側にいただろう。
だから、我が子を一度も見ることもなく、というのは間違いかも知れない。
ずっとずっと、見守ってきたんだろうな。
そんな息子も今年で16歳になる。
高校生だ。
ただ陸上少年ではなく、野球少年だけどね。

僕は毎年、この時期に彼女のお墓参りをする。
ある年は、お墓に野球のボールが置いてあって、息子から彼女へのメッセージが書かれていた。
それを読んだ時は、さすがの僕も泣いてしまったけど、嬉しそうに笑う彼女の姿が見えたような気がして、また、和らいだ。
僕の知っている彼女は、中学生の時の姿だけ。
息子が野球をしている姿を、あの頃みたいに、マネージャーみたいに、また支えてるんだろう。
応援してるんだろう。
彼女の応援、パワーが出るんだよなあ。

今年のお墓参りは雨だった。
花びらからしずくがたれる。
まあどうせ、彼女はここにはいないだろうけど、また来年も来るからねと、墓石にグータッチしてきた。
きっと今でも、僕を応援してくれてるはず。
そう感じる。


彼女に会いたい。
あの笑顔に、また会いたい。
おっさん
おっさんはおっさんなりに、「今」って時代の空気感だけは、ずっと感じれるおっさんでいたいなあって思う。

「若い気持ち」と「若い心」は、やっぱり別物。
43歳の今の僕と、高校生の頃の僕を比べたら、知識は圧倒的に増えたけど、体は確実に老化の道を順調にたどっていて、でも、女性の好みと心の根っこはあんまり変わってないなあと思う。
でもだからといって「若さ」はやっぱり、そこにはない。

例えば、未だに好みの味がジャンキーだったり、湘南爆走族って漫画に同じ苗字の登場人物がいるってことを20代の子に熱弁してみたり、あの頃に好きになったトムウェイツの「Closing Time」が未だに1番好きなアルバムだったり、久々に尾崎豊のシェリーを聴いて、なんだかグッときたり。

それにしても失敗の多い人生。
遠回りの人生。
迷いまくる人生。