桐本のアニキ



3月11日放送のNHK「プロフェッショナル~仕事の流儀~」に、我らがアニキ、輪島塗の桐本さんが登場。
 
能登半島地震のまだまだ真っただ中にいて、それでもそこから立ち上がろうと奮起する姿は、僕が知るアニキそのものだったので、言葉は正しくないかもしれないけど、でも、嬉しかった。
 
これは輪島塗じゃない、と拒絶された過去の話は以前から聞いていたけど、今ではもう、輪島になくてはならない人。
時間はかかったのかもしれないけど、輪島をここまで深く愛してる人の想いが伝わらないわけがない。
 
桐本アニキとの出会いは、僕が東京の清澄白河に事務所を構えたあとだから、もう15~16年以上前とかになるのかな。
僕の師匠である、柏木江里子さんに紹介してもらったのが最初の出会いだったと思う。
 
映像の中でも触れていたけど、輪島キリモトが作る漆器の魅力のひとつは、その美しさのみならず、傷ついてもまた直して、そうやって長く使っていけること。
当時、不況にあえぐ地場の中で、どうすれば喜んでもらえるか、どうすれば心地よく使ってもらえるか、その原点とも言うべき問いの先にあったのが、輪島塗の王道を避けてまで挑んだ、輪島キリモトだけの新たな輪島塗だったんだと思う。
 
桐本アニキや輪島キリモトの職人の方々を見ていると、輪島キリモトが生み出す漆器の本当の魅力は、フォークでガリガリしても傷がつかない強さ、というより、傷ついてもなお、その傷をも受け入れ、それすらその漆器の大切な物語の一部にしてしまう、そんな「しなやかさ」なんじゃないだろうか。
 
桐本アニキという人もまた、全てを跳ねのける強さの人ではなく、誰よりもしっかりと傷ついて、まわりの人たちの傷も一緒に抱きしめて、さあそっからどう立ち上がるかを自然と考える、本当にしなやかで魅力的な人だなと改めて思った。
 
輪島塗のような、桐本さん。
桐本さんのような、輪島塗。
 
さあ、もっかいここから。
アニキのことだから、もうとっくに走り出しているだろうけど、輪島塗、輪島キリモト、そしてそれを心から愛する人たちの物語は、まだまだこれからも、ずっとずっと続いていきます。
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