銀座手仕事直売所には、僕と同じ世代の職人達も多い。
伝承の先にある、次世代への継承を担う世代だ。
彼ら彼女らとの会話は、毎年すごく刺激をもらえる。
どこの伝統工芸も、比較的よく似た悩みがあるようだ。

その中で、改めて思うことがある。
松阪木綿の世界のみならず、地方の食品や工業や産業の生産者の多くが、口癖のように「まずは販路だ、販路を確保しなければ。」と言う。
でもちょっと違和感を感じる。
もちろん販路の開拓や確保はめちゃくちゃ大切だ。
だけど、「販路が確保されたら、もっとすごくいいものが作れるのに!」ってのは変じゃないか。
そもそも販路が見つからない原因の一端は、その商品に魅力がないからなのかも知れないんだし、そんな都合のいい話、本当にあるとは思えない。
あくまでも、いいものを作るから、販路が開けてくるのであって、販路ありきの開発では、順番がおかしい。
これだと、必ずいいものを作るから、とにかく先にお金を払ってくれないか、と言っているようなものだ。
そんなことが可能なら僕だってそうしたいけど、そんなことじゃあ、決して扉は開いてくれない。

まずは、今の自分の技術や資金やアイデアやセンスの中でできる最高のものを作ろう。
どの状態なら世に出していいかは自分の判断に全責任があるけど、それが本当に優れたものならば、たとえ未完成でも、それを欲しいと思ってくれる市場は必ずある。
そうして初めて、販路が開く。
道がつながる。
ようは、その覚悟があるかどうか、それが試されているのだと思う。

松屋の優秀なプロバイヤー達が仕掛ける銀座手仕事直売所って場所には、販路ありきの開発ではなく、いずれ開く販路のために、自分を信じて、日々腕を磨き、バイヤーやユーザーの心を掴んできたプロ達が集まっている。
それがどんなジャンルであれ、ものを作っている人達は、たとえ無理してでも、彼ら彼女らの「熱」を感じに、ここへ足を運ぶべきだ。
銀座手仕事直売所 2013 後半戦



銀座手仕事直売所も後半戦に突入。
多くの方にご来場いただいております。
ありがたい。

僕といえば、足腰がすでにボロボロですが、何とか頑張っております。
奥さんと娘にとっては1年半ぶりの東京。
娘にとっては、東京は出生地であり、生まれ故郷でもある。
これからも時々連れてきてあげないとな。

今日の東京は心地よい秋の空。
屋上テラスにいると眠くなる。
銀座手仕事直売所 2013









銀座手仕事直売所2013。
会場は初日から大賑わい!

毎年、素敵な出会いをもたらしてくれる、手織りのストール「フアヲ」は今年も好評です!
今年からお目見えのミニトートもお客様の反応は上々。
伝統工芸の匠の技を愛らしいフォルムにパッケージしました。

お近くにお越しの際はぜひお立ち寄りください。
インクルーシブデザイン
最近ちょっと、飛ばしすぎてたのがダメだったのか、13日の夜に腰を痛め、今だ起き上がれない状況。
何とか四つん這いではってみるも、5メートル先のトイレに行って戻ってくるのに45分かかってる。
おそろしい位に仕事が溜まっているこのタイミングでのギックリは、スケジュール的にも相当痛い。
関係者の方々には多大なご迷惑をお掛けしてしまい、本当に申し訳ないです。
ごめんなさい。

でも、こういう機会ってそうそうないので、以前から興味を持っていた「インクルーシブデザイン」について考えてみた。
インクルーシブデザインとは、簡単に言えば、商品の開発段階から、障害者や高齢者などの、通常の商品開発においては無意識に対象から外されてしまっている特定の方々の意見を積極的に取り入れていこうってことだと僕は解釈してますが、今、トイレに行くにもスイスイいかない状態から見える世界には、これまで気がつかなかった新たな発見がいっぱいあります。

何でもなかった小さな段差、ドアノブやスイッチの位置や形、材質、色味、手ざわりなど。
子供の目線や障害者の視点を想像することはずっとやってきたつもりだけど、実体験して得られることは計り知れない。
かといって、ギックリ腰になれって事じゃなくて、そういう実体験を持っている人達の意見を、やっぱりもっと大切にしていくこと、そしてそれらを正しくデザインしていくことが、ものすごく大切なんだと、今、ベットの上で実感しています。

とにかく早く治さないと。
病院行くにも、起き上がれない今はそれも無理。
パソコンのとこにも行けないので、メールやメッセージの返答はもうちょっとお待ち下さい。
本当にごめんなさい。

お風呂や着替えやお茶を飲ませてくれたりする奥さんと、四つん這いで進む僕のためにドアを開けてくれたり、ガンバって〜って言いながらお尻を一生懸命押してくれる2歳の娘に心から感謝。
でいじょうぶ?(大丈夫)って言って、小さな手で頭を撫でてくれるたびに、痛みを忘れられるよ。
ありがとう。

皆さんも、どうかご自愛を。
武家の古都・鎌倉 世界遺産に不登録と勧告
同感だが、一方でそうでなきゃ困る人もいる。
難しい問題だけど、でも今回のイコモスの決定は正しい判断だと思う。
建前だけの文化保全じゃあ意味がない。

▼「建築のジェノサイド」に気付かない日本
http://m.newsweekjapan.jp/column/tokyoeye/2013/09/post-726.php
擬革紙の会 発表会









今日は、ここ数ヶ月に渡って、商品作りのプロデュースをお手伝いさせていただいた、三重県度会郡玉城町の「参宮ブランド擬革紙の会」の発表会でした。

江戸時代、伊勢神宮へのおかげ参りが一大ブームとなりましたが、当時は、獣物を持って中に入ることが許されていませんでした。
そこで、和紙を革そっくりに加工した「擬革紙」が誕生し、おかげ参りのお土産として大ヒットした商品です。
時代の流れとともに一度は途絶えた伝統を再興しようと立ち上がった擬革紙の会は、伊勢神宮の遷宮に間に合わせるため、今日の発表まで全速力で準備してきました。

午前中は三重県知事にもお披露目し、新聞やテレビなどの多くのメディアにも取材していただきました。
今日はあくまでも「伝承」へのスタートラインにようやく立ったようなもの。
その先にある「継承」まで繋げていくためには、まだまだクリアしなければいけない問題はありますが、それでも、無事に今日の日をむかえられたことに、心底ホッとしています。


▼歴史の情報蔵
http://www.bunka.pref.mie.lg.jp/rekishi/kenshi/asp/meiji/detail.asp?record=426

▼擬革紙の会ブログ
http://gigakusi.cocolog-nifty.com/blog/
ピン!
僕らデザイナーは、アーティストではないから、アイデアが天から降りてくるなんてことは決してない。
そのかわりに、僕らには、「ピン!」という武器を与えられた。
ピンときた!ってやつ。
何かの課題に向き合ったとき、頭の中の引き出しを開けまくる。
溜め込んだそれらの中から、あっ、あのときのこれとこれをくっつけたら、この問題って解決できるんじゃないの?とか、全然関係ない分野だけど、あのときのこれって、今のこれに活かせるじゃん!とか。

だから僕らデザイナーは、普段から、色んなもの見て、聞いて、感じて、体験して、話して、ストックを増やしておくことが大切。
今は全然使い道がない物でも、いずれ役に立つってことがある。
実際の荷物は少ないほうがいいけど、アイデアのストックはもっと欲しい。
だから今でも僕は、いろんな業種の人を話しをするのが大好き。
特にこれまで何の接点もなかった人との会話は実におもしろい。
なんでもない会話の中から、ビックプロジェクトの核となるアイデアが生まれたりもする。
ピン!だって、対して確信を持って話したことではなかったけれど、今でもその考えは変わってはいない。

これからも、もっともっと、色んな人と話をしてみたい。
その会話の中から、僕らデザイナーはちゃっかりと、アイデアを増やすためのネタをいただいています。